柳屋は後継のいらっしゃらなかった「サカエ家」さんの後を継ぐところから始まりました。あれから三年半。あの時84歳で引退された女将さんが、今も変わらずお美しくて凛としてらっしゃって、久しぶりにお目にかかり、こちらまで背筋が伸びるような気持ちになりました。

　ふと、女将さんの手元に目をやると、爪が綺麗に手入れされマニキュアも塗られています。

鉄輪の大繁盛の時代に、朝4時半に起きて12時にようやくお休みになるような生活で宿を切り盛りされていた頃でさえ、マニキュアを欠かしたことはなかったのだそうです。お客様に手元を見られたり、握手を求められたりした時に恥ずかしくないようにと。そしてその習慣は今でも続いているのだそうです。

　女将さんの偉大さは、何かあるごとに思い知ってきました。知性と教養、意志の強さ、粘りと胆力。時代を読む力と経営センス。そして、今回また改めて、女性としても憧れを強くしました。ずっとお元気でお美しく、私たちの見本でいてくださいますように。

ehko